【愛犬の失明】犬のしつけトレーニングについて考える 

2014年に旅立った愛犬(ダックスフンド)が、
進行性網膜萎縮症で2歳で失明した当時のことを振り返りながら記しています。

光を失った代わりに音に敏感になり、それに付随して、一時期、吠える声も大きくなりました。
これまで基本的なしつけはできていましたが、犬のトレーニングについて考えるようになりました。

年月は経過していますが、今でも通用する捉え方と思っております。お役に立てましたら幸いです。

目次

自宅でのトレーニングを受けてみる

試しに自宅にて、犬のトレーニングレッスンを受けることにしたが、
結果、あまり手応えはなかった。

私の犬は、光を失っている分、音に敏感になったためか、
様々な生活音を聞き分けられるようになっていた。
擬似的な音声には惑わされなかった。

例えば、ドアフォンに反応し吠えたりするのを解消する場合、
ドアフォンを実際に鳴らしたり、ドアフォンに似た音を他から出力したりしたが
リアルとそれ以外を聞き分けて反応するため、吠えの問題は全く解消されなかった。

目が見えていないのに、である。


そもそも、トレーニングを受ける上で、
何より困ったのは口がキレイで食いしん坊とは程遠いことだった。

犬のしつけトレーニングやレッスンを受けた経験のある飼い主の方は、
成程と納得してくれるであろう。

特に、褒めて育てる・褒めてトレーニングをする、といった陽性強化の方式は、
犬にも飼い主にも負担は少なかったが、それに使うご褒美には、魅力的なモノが不可欠になる。

どんなにお腹を空かせているであろうときも、どんなに魅力的なスペシャルなオヤツを用意しても、
私の犬はご褒美には惑わされず、レッスンに飽きると、ひとりでハウスに戻って寝ていた。

残念ながら成果が無いのにレッスン料がかなり嵩んだため、
トレーニングを受けること自体を諦めた。

代わりに自分が本格的に犬のしつけトレーニングを学び、
私自身が犬の専属トレーナーになる方向にシフトしようと思った。

ドックトレーナーから学んでみたい

目の見えない犬と飼い主のためのサークル」に以前、参加したことを書いた。

そこで出会ったインストラクターが、
犬のしつけは ”トレーニングよりマネジメント”と言っていた台詞に共感していたので、
犬のトレーニングを学ぶなら、その先生が講師をしているところで学びたいと思い、
インストラクターコースを受講した。

講義パートをひととおり学び、実技パートの3日間の集中キャンプに参加した。

時折、触れているが、元々、犬を含む動物全般が苦手な自分が、
犬のしつけを学ぶトレーニングコースを、
ましてやインストラクターコースを受講するなんて大躍進である。

料金もそれなりにする。ましてや、実技パートは本物の犬を取り扱う。
自分の犬ならば、性格も好きなこともウイークポイントも把握しているが、
はじめましての犬のそれらは当然分からない。

比較的、トレーニングに慣れている犬たちを揃えてもらっているとはいえ、
犬種も違えば、大きさも違う・・・当たり前であるが、短時間で彼らの特徴を掴む必要があった。

自分の犬のインストラクターになりたい

同期として参加メンバーは20人。当然ながら、かなり意欲的な面々。

ほとんどが動物看護師、ドックトレーナー。
インストラクターコースであるのだから当然である。
普通の飼い主は、自分以外は同期には居なかった気がする。

皆が、犬のトレーニングについて、
家庭犬のインストラクターを目指していることについて、
熱意をもって語っていた。

一方で私は、自己紹介で、
私の犬が遺伝性の疾患で失明していること
一飼い主として、目が見えない自分の犬の専属トレーナーに、
そのために学びたいと思った経緯を話した。

集中キャンプの場所を提供していた獣医学部のある大学へは、
私は自宅から通える距離だった。しかし、ほとんどは遠方から泊まりで参加していた。

夜、近くのお店で、みんなが夕食を取るといい、私も誘われた。
深夜まで、同期同士で、犬のトレーニングへの想いを熱く語った。


私は一飼い主の立場で、例のサークル立ち上げに携わったことに触れたら、
思いの外、そのサークルが知られていて、驚いた記憶がある。


サークルの内容は彼らにも関心の高いテーマだったようだ。
そのこともあって、私は一飼い主という立場での参加であったが、
すんなり打ち解けることができた。

ハンドリング試験を受けてみて

初日に、キャンプのパートナーとなる犬と組み、ひとりひとり異なる課題が与えられた。
最終日に”はじめまして”の別の犬と共に、理解度を測るためにハンドリングの試験を受ける。

私は小型犬を飼っており、キャンプで組んだパートナーは中型犬。そして、試験は大型犬だった。

一生懸命、練習したリードワークは焦ってしまい散々に終わった。
他の課題も幾つかあったが、緊張して慌てていて、殆ど覚えていない。

ハンドリング試験の結果は当然芳しくなく、
総評では案の定、次のステップに進むまでに幾つかの課題が与えられた。

正直、課題をこなすのは心が折れそうなほど、キツい場面もあったが、
このキャンプへの参加は、一飼い主でいるだけでは味わえない、
実りある濃密な体験をしたと思っている。

この経験は、私が目が見えない犬と暮らしていなかったら、味わえていないことだ。

初めて飼った犬が突然、失明宣告をされ、
途方に暮れるほど泣いたあの日がなかったら実現しなかったのだ。


このときのキャンプでの体験は、
その後の犬たちとの暮らしの中でかなり活かされたので、今、振り返っても満足している。

その後、暫くの間、支持するインストラクターの元へ、犬と共にトレーニングに通った。

光を喪った犬でも、充分、褒めて育てることができることが、実感としてわかり、
それからも、いわゆる、沢山の技を犬と共に習得した。

目が見えなくても、私の「ハウス入って〜」の一言で、
クレートに走って行き、中に入ることさえできるようになる。

ちなみに、他に2頭飼っていたので、クレートは並んで3つあった。

時々、3つ並んだクレートに、誤って他の犬のクレートに”ぴょん!”と入ってしまい、
自分のクレートに先に入られてしまった方の犬が、
あれ?、って顔をして、私を見上げることがあり大笑いしたものだ。

愛犬の目が見えなくなっても、生活の質を落とさずに、過ごすことができる。
そのことを、今、途方にくれている飼い主の方がいたら、
気持ちに寄り添って、そっと背中を押したい。

大丈夫。あなたが、あなたの愛犬の目のかわりになることは充分にできる。
愛犬との信頼関係はより強くなる。

ちなみに、私は、自分の犬のインストラクターになれたという手応えがあった為、
その後は、その上位のコースに進むことは選択しなかった。


しかし、これらの体験が、自分と犬たちに与えた影響は計り知れないと思っている。


飼い主としての想いや取り組んだことを当時を振り返りながら記しています。
次回は、犬と音に関する話などについて。今後もお付き合いいただければ幸いです。

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